スピーカー開発販売のバタフライサウンド

群遅延特性とその聴覚テスト

スピーカーシステムの低域周波数特性と群遅延特性の関係

群遅延特性の様子を確認する為に、WinISDというツールを使ってみます。このソフトはユニットのティールスモールパラメータを与えると、適切なエンクロージャサイズとエンクロージャサイズによる低域の周波数特性、位相特性、群遅延特性を即座にグラフ表示してくれる便利なソフトです。今回はある12cmのウーハーを密閉型とエンクロージャ容量とポートサイズを変えた位相反転型、2種類を比較してみたいと思います。
グラフ線の黄色は標準サイズの密閉型、緑は標準サイズの位相反転型、オレンジは大きめのエンクロージャの位相反転型です。

低域の周波数特性

-3dBで表すと大きめの位相反転型が最も良く35Hz辺りです。次いで標準の位相反転型の53Hz、密閉型の90Hzです。標準エンクロージャよりも大きな位相反転型では周波数特性はフラットになりませんので、そこそこの特性を狙います。

群遅延特性

最もレスポンス遅れのピークが大きいのは大きめのエンクロージャの位相反転型で29ms、ついで適正な位相反転型の10ms、密閉型の3msです。

密閉型の場合にはどのようなエンクロージャ容量に設定しても、群遅延が問題になることはまずありません。
一方、大きなエンクロージャを使って低域を稼ごうとしたこの位相反転型(オレンジの線)では、群遅延のピークがまだ充分に可聴範囲の中にあるため、聴覚的に影響を及ぼすことが予想されます。このサイズのユニットでは適正値を守る必要がありそうです。注目すべきは大きめエンクロージャの群遅延は、ピークこそ29msありますが、50Hzまでは標準サイズのそれよりも優れています。もっと大きなサイズのユニットを使用し、遅延のピークを可聴範囲の限界近くか、それ以下に位置させる事ができれば、ある程度の大きさの遅延はあまり問題にならないはずです。この様な使い方をする場合、口径16cm以上のユニットが必要です。

聴覚による比較

概要・・・実際の演奏から低音のみを遅らせた聴覚テスト用の音源をいくつか作成し、ヘッドフォンで実際に耳で聴いて低音の遅れを確認してみたいと思います。

聴覚テストに使用する音源の作成
(以下の操作は"Sound Studio"というMacintoshのソフトウェアで行っています。)

1)4小節のドラムソロの入った音声ファイルを用意し、フィルタ処理して低音部とそれ以外の帯域の2つのファイルに分割します。

フーリエ スペクトラム
ハイカットした音源。
50~70Hzにバスドラムの基音が存在している様子が判ります。
ローカットした音源。
100Hzから上のいくつかの山はバスドラムの倍音とタムの基音、倍音が存在しています。

2)この2つを合成して基準(群遅延なし)のファイルとします。

ハイカットした音とローカットした音を合成したフーリエスペクトラム

3)ハイカットした音声ファイルを10msづつ遅らせて、ローカットした音と合成していきます。
低域の遅れた音声ファイルを10ms~80msまで用意しそれぞれ保存します。
MP3にエンコードしたものを下に用意しましたので、実際に聴いてみて下さい。

聴覚による比較

ヘッドフォンで下のMP3ファイルを聞き比べてみて下さい。
使用するヘッドフォンは普及型のもので充分ですが、大きめのものを使用して下さい。今回私が使用したヘッドフォンはDENONのAH-G11という普及型のもので、再生周波数は18Hz~22kHzという仕様のものです。イヤホン型のヘッドフォンでは違いを確認するには無理があると思います。

この音源の聞き分けのコツ
最初に基準と80ms遅延の音を聞き比べてみて下さい。これは音楽が好きな方なら誰でも簡単にバスドラムの遅れが判ると思います。基準-80ms、基準-70ms、基準-60ms、といった順に差を狭めていくと40msまでは殆どの人が違いをはっきり認識できると思います。その先は・・・ 良く聴いてみて下さい。
基準(遅延なし)
10ms遅延
20ms遅延
30ms遅延
40ms遅延
50ms遅延
60ms遅延
70ms遅延
80ms遅延

いかかでしたでしょうか?
以下は私個人の聴覚テストの感想です。感覚的なテストですから主観的表現も含まれていますし、当然人によって結果は少し違うものになると思います。できればご自分で実際に聴覚テストされてから読まれる事をお勧めします。

私としては、当初予想していたよりもはっきりと遅延の様子が確認できました。50ms以上では問題外という程低音が遅れています。40msでもちょっと我慢できないレベルだと思います。30msでも基準と比較すると遅延は一目瞭然というか一聴瞭然です。20msでなんとか許容範囲というような気もしますが、基準と比べますと違いははっきりとわかりますので、ドラマー特有のノリとかグルーブ感というものは損なわれてしまうと思います。そこで10msまでが低域の遅延の許容範囲だという事になりますが、それでも4小節目の裏で入れているキック(バスドラム)などは、喰ってくるようなかっこいい雰囲気が失われて気持ちがいい程ではなくなってしまっているという印象を受けました。
この聴覚テストのまとめとしては、ロックのビートを気持ち良く聴くためには、できれば10ms以下、最低でも20msというのが目安ではないかと思います。もちろん、この遅延をどこまで許せるかは個人差があると思います。
 尚この聴覚テストはあくまで限られた条件に基づくシュミレーションである点に留意して下さい。群遅延特性が良い低音再生のすべてではありません。実際のユニットを使った場合の再生音は過渡特性(とくに立ち上がり)に大きく左右されます。人間の脳の聴覚処理は音の立ち上がりにとても敏感で、連続音の中間は割とはしょって処理しているという事が知られています。過渡特性が良ければ、そうでないシステムでの再生音よりもその音を強い音と感じ取ることができます。これはスペクトラムアナライザで測った周波数特性と人間の聴覚が一致しない要因のひとつでもあります。エンクロージャやその他の要素がどのように過渡特性に影響を与えるのか、後日別ページを設けて検証して行きたいと思います。


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